経営状態の良し悪しもリサーチが必要

私は大学生の頃、学習塾で講師のアルバイトを2年ほどしていました。小学生に国語、中学生に国語と英語を教えており、 通常のカリキュラムでは週に3日、夏期講習、冬期講習、春期講習など、長期休みのカリキュラムでは、土日を除く平日に出勤していました。

当時、大学で教職課程をとっていて、 教師を目指していた私にとって、塾の講師のアルバイトは、 実際に子どもたちを直接指導する経験が積める上に、 他業種のアルバイトに比べて、高めのお給料がもらえたため、 一石二鳥とも言える、最良のアルバイトでした。

勤務を始めて1年ほどは、大きなトラブルもなく順調に過ぎていきました。 それどころか、教えていた子どもたちが志望校に無事合格できたり、 学校の成績が伸びていったりと、指導する喜びを日々感じていました。

「大学を卒業するまで、このアルバイトを続けたい」 という気持ちも持っていたし、 私自身も、より良い指導ができるよう、授業に工夫を重ねたりと、 かなり熱意を持って、日々のアルバイトに臨んでいました。

ところが、勤務を始めて1年経った頃から、 給料の振り込みが遅れるようになってきたのです。

私のアルバイト先の塾は、 大手のチェーン展開している塾ではなく、個人経営の塾で、 給与の振込も、経営者である塾長先生が行っていたため 「忙しくて振り込みが遅れてしまったのかな」 「人間だから、ミスしてしまうこともあるよな」 程度にしか受け止めておらず、 最初の頃は、あまり気に留めていませんでした。

ところが、給与の遅配は毎月のように続くようになりました。 しかも、最初は2~3日程度の遅れだった給与の遅れは、 1週間、2週間遅れとなっていきました。

ここまで毎月、給与が遅れるようになると さすがの私や、他のスタッフも 「おかしい」と感じるようになってきたので 塾長先生に理由を尋ねたのですが 「自分がうっかりして振込みを忘れてしまっただけ」 という返事しかもらえませんでした。

納得しかねる回答でしたが、 誰が聞いても、これ以上の答えをもらえることはありませんでした。

給料の遅配は改善されるどころか、その後も相変わらず続きました。 それどころか、それまで銀行振り込みだった給与が、 突然、現金支給に変わりました。 そのことに対する事情の説明は一切ありませんでした。

このとき、私はアルバイトを辞めることを決めました。

給与の遅配についてや、給与の支払い方法の変更について 経営者である塾長先生が、 こちら側が納得いく説明をしてくれなかったことに対する不信感が募ってのことでした。 これが最大の理由です。

そして、私達スタッフには知らされてはいないものの、 塾の経営状況も恐ろしく悪くなっているのだろうと思いました。 閉校になるのも時間の問題であろうと感じました。

とはいえ、指導している生徒たちを放り出して辞めるというわけにはいきません。 せめて受験生の進路が決定するまで、 受験生じゃない生徒も、年度の区切りの時期まで、 受け持ったからには、責任を持って指導したいと思い、 その年の3月31日の、年度いっぱいまで勤務して辞めることにし、辞職願を提出しました。

アルバイトの講師は全部で4人いましたが、 そのうち、私を含めて3人が年度末で辞めることになりました。 皆、不信感が募ってのことでした。

給与の遅配はずっと続いていましたが、 「子ども達を志望校に合格させたい」 「何とか年度末まで責任を持って指導したい」 という思いで、何とか辞職の日までアルバイトを続けました。

そして、年度末にアルバイトを辞めました。 アルバイトを辞める際、 「最終月分のアルバイト料が払えるようになったら連絡をするので、 そうしたら、印鑑を持って受け取りに来てください」 と言われました。

ところが、1ヶ月経っても連絡がありません。

そこで、私のほうから塾に電話を入れてみたのですが その番号は既に、つながらなくなっていました。

私と同じタイミングで辞めたバイト仲間と連絡を取って、 塾のあった場所に行ってみると既に閉鎖されていました。 どうやら塾は倒産してしまったようです。

塾長先生の連絡先も分からず、 最後の1ヶ月分の給料はもらえずじまいでした。

私はその後、大手のチェーン展開している塾で 引き続き、講師のアルバイトを始めました。

そこの塾の社員の先生に聞いたところ、 私が前にアルバイトをしていた塾は、 数年前から経営が傾いていたということで、業界では有名だったそうなのです。

アルバイトは、時給の良し悪しであったり、 自分の希望する職種であるか否か、 という条件のみで選びがちですが、 それだけで選んでしまうと、私が経験したように、 給与の遅配、無支給という事態を招いていまうのだと痛感しました。

アルバイトとはいえ、勤務先を選ぶ際は経営状況の良し悪しなど、 その会社のことを、きちんとリサーチしたうえで働かなければならないということを 身をもって感じました。